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個性を尊重し合える社会にするために必要なことは?/”問い”を育む 高校生たちの物語 #07

 

「”問い”を育む 高校生たちの物語。」は、カタリバオンライン for Teensで出会った全国の高校生の「未来」と「探究」を応援するインタビュー企画。

日常の小さな疑問や違和感、純粋な好奇心や”好き”から、迷いながら一歩ずつ「マイストーリー」を歩む高校生を紹介します。

めのさんプロフィール

高校2年、沖縄在住、N/S高投資部所属、N/S高マイプロジェクトに参加
自分自身が当事者でもある発達障害について興味を持ち、「発達障害をもつ方の生きづらさを解消する」ことを目標としたプロジェクトを行う

 

発達障害に悩む子どもたちをサポートしたい!

Q:今取り組んでいる探究活動/マイプロジェクトについて教えてください

「発達障害をもつ方の生きづらさを解消する」ことを目標に、活動に取り組んでいます。

特に「気持ちの表現しづらい」といった特徴に注目し、気持ちの整理や言語化をサポートしてくれる「ノート」の開発を進めています。ノートの記載項目は、発達障害を持つ方と関わることの多い、心理学カウンセラーさんや社会福祉士さんにも協力してもらい、アドバイスをいただき、いろんな人の力を借りて取り組んでいます。ターゲットは、内容が理解できるようになる小学生の高学年〜高校生の方です。

また、ノート以外でもオンラインイベントをやってみたいと思っています。自分や支援者だけではなく、多くの方に「発達障害」について理解を深めてもらうことも大切です。発達障害は生まれつき脳の機能に違いがあるため、無理やり治すというより、まわりに手助けを求めたり、理解を深めてもらうことが、生きづらさを解消していくことに繋がります。自分と違う人であってもお互いの存在を尊敬・尊重しあう社会になってほしいと思います。

 

Q:発達障害をテーマに取り組み始めたきっかけは何ですか

自分自身が中学3年生の時に、発達障害と診断されたことがきっかけでした。

当時、療育施設に通っていたのですが、その中で困った出来事がありました。
施設に通わなくてはいけない日、なんとなく行きたくなかったため、施設へ「休みたい」と連絡したところ、その理由を尋ねられたんです。私は突然の質問に焦り、自分の気持ちや理由を伝えられず「行きたくない」としか伝えられませんでした。これだと施設の方も何をどう改善していけばわからず困ってしまうため、モヤモヤした気持ちを自分の中で言語化できるようにしないといけないと思いました。
自分の気持ちを整理したり、言語化して伝えたりすることができれば、同じ課題に直面している方にも役立つと思い、プロジェクトをスタートしました。

 

▲自分の気持ちの言語化・整理できるノート

「自分と違う人を認める」尊重しあうことで生まれる大事な価値観

Q:取り組む中で嬉しかったこと、大変だったこと、工夫したことはありますか

ノートの試作品を施設の人にも見てもらったのですが「こういうのが欲しかった」「使いたい」と言ってもらえて嬉しかったです。逆に落ち込んだときもあり、アンケートを実施した際に「使いにくい」「必要ない」といった意見もありへこみました。しかし、一人でも必要だと思ってくれた方がいるのならば、作る価値はあると確信しています。

また、発達障害の特性として「感覚の過敏さ」というものがあり、真っ白な色や反射する素材のものは人よりも眩しく感じてしまうことがあります。私は、教科書もツルツルしていると眩しく、真っ白な紙に黒の字だとコントラストが強く読みづらいと感じていました。そういったことを考慮して、凹凸のある紙を採用して反射を抑え、紙の色は黄色っぽいものや、文字の色はグレーっぽいものを使用しています。発達障害をもつ方の目線で、心地よく使えるノートを目指しました。

 

Q:探究活動/マイプロジェクトを通じて、どんな学びや変化がありましたか

人と関わること、協力することが楽しくなったと感じます。もともと人と協力して進めることやチームプレーが苦手な方でした。高校1年生までは、友達と一緒にノートのプロジェクトを進めていたのですが、友達と意見がぶつかったりした経験があり、そういったときにどう対処すれば良いのかを学びました。

また、自分でもノートを活用していますが、自分がイライラしたときなど気持ちの整理がつき、理由が把握できるようになりました。それによってその課題のために必要な準備やケアが明確になるため、自分にとってノートは重要なツールになっています。

 

Q:これからどんなことにチャレンジしていきたいですか

まずはノートを届けることに注力したいと思います。たくさんの方に広めていくために、紙でやりたかったのですが、進めていく中で在庫の問題や金額的にも難しいことがわかったので、Googleフォームなどを活用しデータで配布することを考えています。

また、以前から温めている「やりたいこと」もあります。自分は子どもの頃にとても辛い時期があり、その経験から「小さい子たちに人生に絶望を感じて欲しくない」という思いがあります。小学生でも命を絶つ選択をする子がいますが、そんなに自分を責めないでほしいし、そんな歳で人生を決めるような子が出てしまう苦しい社会になって欲しくないです。こういった課題を解決したくて、自分でできることはないか考えています。

解決するアイデアとして、子どもたちに「人生のモデル」を知ってもらうことが解決に繋がるのではないかと思います。セクシャルマイノリティ、いじめ、発達障害など、さまざまな悩みがありますが、自分と同じ悩みを持って頑張っている人がいたら嬉しいし希望になります。実際に悩んでいた方に、困難を乗り越えたエピソードなどをインタビューして、記事を書いて発信してみたいです。

高校卒業後は、子どもの心理学について学びたいと思っています。将来は、子ども食堂的な雰囲気が近いのですが、子供が集まれる学校と家以外の居場所づくりをやりたいです。自分は発達障害があり、人との関わりがそんなに得意ではないですし、セクシャルマイノリティの当事者でもあります。当事者同士だから話しやすいこともあると思います。悩んでいる子どもたちの話し相手になり、その子たちが少しでも気持ちが楽になるような取り組みをしたいです。

「意志」を持って動けば、悩んでいた問題も楽しくなる。

Q:今回カタリバオンライン for Teensに参加してどうでしたか?

自分自身、コミュニケーションは得意ではないのですが好きで、いろんな高校生が集まっているので、さまざまな価値観に触れて対話できたらいいなと思い参加しました。未知の場所に飛び込むことは不安もありますが、試しに参加してみたらとても楽しかったです。今後も興味のあることには思い切って参加してみたいし、一歩踏み出したことは自信にもなりました。

また、自分が興味がなかったテーマに取り組んでいる子をみて、新しい学びにもなり「自分も頑張ろう!」と思いました。逆に自分と同じ悩みを持つ子もいて「一人じゃない」と思えましたし、同じように悩みに対して頑張っている人がいることを知れて励みになりました。

印象なのは「学校制服のルール」についての取り組みでした。中学生の時に自分もスカートを履くことに違和感を持っていました。「スカートを履きたくない」と言うといじめられるかもしれないですし、そんなリスクがある中、立ち上がって校則を変えようとしているのがかっこいい!と思いました。

 

Q:「プレゼンテーションスキルコース」と「イベントプロデュースコース」に参加してみてどんな学びがありましたか

今後、やりたいことを実現していくにあたり、「プレゼン」や「イベント企画」は自分にとって必要なスキルだと思っていました。

「プレゼンテーションスキルコース」では、プレゼン資料の作り方や話し方、どういう順序で話したらいいかといった基礎的なことを学べて良かったと思います。私は今まで伝えないことをそのままつらつらと話すだけだったけれど、わかりやすい話し方には決まりがあることを知れてためになりました。

「イベントプロデュースコース」では、百人一首の魅力を相手に伝えるためのイベントを企画しました。相手は自分が話すテーマについて興味がない可能性がありますが、実際イベントをやってみて興味を持ってもらえたり、ディスカッションに協力をしてくれてとても嬉しい気持ちになりました。自分も他の高校生が発表するときは、リアクションやディスカッションに積極的に参加していきたいと思いました。

 

Q:最後に全国の高校生へメッセージをお願いします!

社会の中で変わってほしいことは「誰かがやってくれるだろう」じゃなくて、「自分で変える」「解決する」と言う意識が大切だと思います。課題や人それぞれの悩みを解決することは簡単じゃないけど、自分で意志を持って動くと楽しくなっていきます。変えたいと思ったら、例え高校生でも主張したり、小さくアクションしていくことで社会は変わることもあると思います。